海のサイエンスカフェ

日本海洋学会教育問題研究会



第1回海のサイエンスカフェ報告

【参 加 者】 中学・高校生(7名)、大学院生(3名)、一般(7名)、海洋学会会員(10名)、合計27名

【進行担当者からのメッセージ】

喫茶店で、プロジェクター等の機材も使用せずに、話題提供者が参加者の間に入って、海洋学の最新の研究成果についてわかりやすく語り、それを材料に海洋学会会員が一般の方々と膝を突き合わせて話し合う・・・そんな試みが果たしてうまく行くのか?そういう不安が無かったといえばうそになるが、話題提供者と学会員のご協力、そして何より、熱心な参加者に恵まれ、第1回目としては、及第点を与えていいだろうと思う。

語りかけるように展開される川合さんの話題提供は、話の内容も難しすぎず、観測風景なども織り交ぜられ、主催者のイメージしたとおりに進行した。アンケート結果からも、参加者に「目から鱗」の驚きを与えたり、面白いと感じてもらえる内容だったことが裏付けられた。会場の性質上、周囲の音(BGMなど)が若干気になった点を除けば、大変うまくいったと思う。アンケート結果から、中高生の中には話す速度がやや速いと感じた人もいたことや、専門的な用語を難しいと感じた人もいたこと、30分の話題提供の間に、参加者への問いかけなど、参加者を巻き込む要素を入れてはどうかという提案など、参加者の率直な感想・意見が得られた。今後の改善に役立てていきたい。

3~4人ずつ、テーブルに分かれての質疑応答・意見交換は80分に及んだ。各テーブルに1~2名の学会員が入り、話題提供に関する質問から、海に関する日ごろの疑問まで、活発なやり取りが展開された。私自身は、3名の社会人参加者のテーブルに入ったが、一人ひとりの疑問や意見に、きちんと応えつつ、そこから派生する議論をテーブル内で展開しようとすると、80分というのは決して長くはなく、むしろ、あっという間という感じだった。おそらく、疑問が十分解決しないまま、あるいは、新たな疑問を抱えたまま、時間切れになった方々も多かったと思う。時間をより有効に使うために、進め方を工夫していく必要性を感じた。たとえば、今回は、参加者2~3人に一人ずつ学会員が付くという贅沢な配置ではあったが、テーブルへの分かれ方はランダムで、かつ、最初から最後まで固定した(というか、移動することを考える間もなく、時間切れになった)。テーブルの構成メンバーや話題に応じて、話題提供者や学会員がテーブルを移動するようなやり方も試してみたい。

参加者の皆さんから頂いた感想やコメントには、はっとさせられるものがいくつもあった。たとえば、「サイエンス」と聞いただけで文系の人には抵抗があるので、「文系welcome!」を前面に出してはどうか、など。また、素人質問を馬鹿にされた経験から、たとえ見当はずれな質問があったとしても、質問者の意気を挫くような対応はできるだけ避けてほしい、という声は、肝に銘じたい。頂いたご意見を生かして、今後も、一般の方々に海を身近に感じてもらう方法を探し出すための交流の場として、「海のサイエンスカフェ」を継続し、よりよいものにしていきたい。

須賀 利雄

【話題提供者からのメッセージ】

 一般の人が対象で、高校生らも参加すると聞いていたので、自分の研究内容よりも、一般的な「地球環境と海+北極海の現状」をメインに話すことにした。このため、改めて多くの資料を読み、情報を集めるなど、私にとっても、良い勉強の機会となった。また、高校生らに海の研究に興味をもってもらおうという趣旨があったため、実際の観測の写真などを用意した。
 当日は、会場が喫茶店ということで、気楽な雰囲気で、参加者の顔を見ながら話すことができた。一般的な「講演」ではなく、コミュニケーションの場であったのが、なによりもよかった。質疑応答の際には、知識の押し付けにならないこと、分からないことをごまかさないことを心がけた。学会員の先生方が多くいらっしゃったので、分からないことは、フォローしていただけるという安心感が大きかった。一般参加者にとっても、複数の専門家の意見が聞けて、よかったのではないかと思う。後半の自由討論の時間には、同じテーブルにいた4人と色々な話ができ、より多くを理解してもらえたし、他のサイエンスカフェでの体験などを教えてもらえた。例えば「一言ずつ感想をお願いします、などと言われない方が、気楽で良い」という意見や、学会などの開催するサイエンスカフェでは、質問をした際に「そんな事も知らないのか」という顔をされることがあるという話などを聞いた。しかし、話題提供者であった私は、もっと他のテーブルをまわって、より多くの人と話すべきだったと反省している。

川合 美千代