海のサイエンスカフェ

日本海洋学会教育問題研究会



植物プランクトンがささえる海の生態系

−北極海にせまる環境変化がもたらす影響とは−

主催
日本海洋学会教育問題研究会
話題提供
杉江恒⼆さん(国⽴研究開発法⼈ 海洋研究開発機構)
進行
大林 由美子さん(愛媛大学)
日時
2018年09月29日(土)09時30分〜11時30分
場所
TULLY’S COFFEE (タリーズコーヒー) 品川インターシティ店
東京都港区港南2-15-2 品川インターシティ A棟 2F
話題提供者より
今回の講演では,「プランクトン」という言葉の定義から,植物プランクトンを起点とした海洋生態系の仕組み,さらには北極海の環境変化が生態系に及す影響まで,生物海洋学について幅広く知って頂くことを心がけました。約1時間の講演で,聴衆の皆さんとやりとりをしながら上記の内容を十分に伝えることはかなわなかったかもしれませんが,プランクトンについて僅かでも心に残るコンテンツが提供できたのであれば,望外の喜びです。
講演資料の作成においては,プランクトンについてほとんど知識のない(と思われる)方から,大学院生や若手の研究員まで幅広いバックグランドを持った方に楽しんで頂けるように心がけました。これまでに撮りためておいたプランクトンや航海等で得た写真,プランクトンや魚などのポンチ絵が役に立ちました。ほとんど目に見えない植物プランクトンのサイズ感,サイズの多様性については,身の回りの生き物の大きさの変化幅と比較しながら話すなど,少しは実感を持ってプランクトンについて知って頂けたものと思います。
北極の環境変化と海洋生態系の変化の可能性については,それまでのプランクトンに関する講演内容とリンクさせて考えられるような内容にしました。北極についての講演に対する質問等は多く,参加者の興味関心が伺えました。個人的には,北極海生態系の話をするのに,手持ちの魚の絵がマイワシとシロナガスクジラしか準備できず,次はタラ類とコククジラあるいはホッキョククジラを作らないと,と思った次第です。
最後に,北極の海氷後退の図を作成していただいたJAMSTECの藤原周さん,ありがとうございました。また,このような貴重な機会を与えて頂き,事前準備から当日のサポートして頂いた大林さん,上野さんおよび藤井さんにも感謝申し上げます。今後ともアウトリーチなどの機会があれば,少しでも海の大切さを知って頂けるように粉骨砕身努力して参ります。
進行担当より
海のサイエンスカフェは、例年春と秋の2回開催しています。春は毎年3月下旬に品川で開催しますが、秋は海洋学会秋季大会の開催地で開催するためその都度開催地が異なります。昨年の秋は仙台で、その前の年の秋は鹿児島での開催でした。今秋は、秋の海洋学会が東京開催となったため、3月に品川で第21回海のサイエンスカフェを開催してから、半年で再び品川での海のサイエンスカフェとなりました。いつもご協力いただいているタリーズコーヒー・品川インターシティ店さんに、今回も素敵な空間を提供していただきました。
今回は、海の生態系を支えている植物プランクトンについてのお話とそれをベースにした北極海での環境変化・生態系変化のお話という2トピック構成で杉江さんが話題提供してくださりました。植物プランクトンについては、その多様性や浮いているための工夫・海の生態系での植物プランクトンの重要性などに「目から鱗!」の驚きを感じたという方がたくさんいらっしゃいました。北極海の環境変化・生態系変化については、杉江さんご自身の研究成果である、温度変化や酸性化による植物プランクトンの増殖速度の変化についてのお話に驚きと注目が集まっていました。杉江さんからの報告にもあるように、北極の環境変化に対する参加者の方の関心の高さが対話の中から伝わってきました。
ご参加いただいたみなさま、話題提供してくださった杉江さん、タリーズコーヒー・品川インターシティ店さんに、心より感謝申し上げます。次回の海のサイエンスカフェ(2019年春)も品川での開催です。次は海のどんなネタで盛り上がれるでしょうか。乞うご期待!