先頃発足した「地球惑星科学連合」に7つの委員会があります。そのうちのひとつの教育問題検討委員会があります。2007年度の高校教科書の改訂に向けて、WGが作られました。「教育課程部会研究集会」が2005年6月18-19日に開催され、海洋学会の教育部会で検討した海洋学会からの案も検討されました。この会合に向けての海洋学会からの意見が下記のものです。 |
2005年6月9日
皆さん、気候、生態系、環境の3語は、語源を辿ると、ほぼ同義語であることをご存知でしょうか。気候はKlimaから、生態系はOikoから、環境はEnvironから来ている。すべて、我々が住んでいる家の周りのことである。 そして、その家の周りを特徴づけているのは生物である。その生物の中でも、現在の地球においては、ヒトの存在がもっとも大きな影響を及ぼしている。つまり、地球上のことは、生物、ヒトを抜きにしては考えられない。 一方、地学分野は、宇宙や地球の非生物部分を取り扱うと自ら宣言し、生物が関わる部分を意識的に外してきた。生物学分野も、物理学や化学分野と同様、基礎科学(実験室)的部分を重視するようになってきた。その結果、地球上で生物と非生物とが関わりあう部分の教育は、日本の学校教育で軽視されるようになった。特に海洋分野は、生物と非生物との関わり合いが中核となるので、小中学校の理科教育に登場せず、高校においても、大学の理学部に海洋学科がないためか、地学に非生物の海洋物理的部分があるだけである。 このような状況下にあって、今回、高校に必修理科4単位程度をおくことが検討されている。これは、万人が生きていくうえで必要なもので、物理、化学、生物、地学の混合物ではなく、融合したものを目指すと言っている。日本海洋学会教育問題研究部会でも、その試案を作ることを検討した。まだ完全なものになっておらず(小項目で抜けているところがある)、また、この先、手直しすることもあろうが、締切日が迫っているので、当部会の試案を発表することとした。 その骨子を述べる。高校1年で必修であるから、中学までの教育を基に、これが理科の最後の履修科目になる者がいることを考え、理科に関して万人が生きていくうえで必要な基本的、基礎的知識を身につけると同時に、自然観、科学的ものの見方の醸成に資するものでありたい。そこで、まず、基本原理や法則につながり、実験室的に再現出来る事象を取り扱う部分と、地球上で起こることなど再現性のない事象を取り扱う部分とに分ける。そして、前者については、より密接な関係を持つ専門家がいるので、大項目、中項目をあげるに留め、ここでは後者について小項目まであげ、より詳しく述べる。 さて、後者については、地球を1個の生命体のように捉える。そして、空間的には出来るだけ宇宙から身の回りへと大から小への方向を取る。時間的には、宇宙の誕生から、過去、現在、未来の時間軸に乗る。内容的には、全体が4単位しかないので、基本事項に限り、それらが全体の中でどのような位置にあるか(座標軸)を意識出来るようにする。そうすれば、興味を持てば、教えられなくても、自分で調べるようになる場合が多いであろう。教える順番としては、自然観を養うことがだいじなので、この大項目を先に教えたい。しかし、第2大項目以下の基礎知識がないと理解しがたい場合があるので、その部分を取り出して教えながら進むか、並行的に進むのもやむを得ない。 このようにして出来上がった日本海洋学会教育問題研究部会案を下に示すが、この最初の大項目「我らが住む地球」は、地球という場で物理、化学、生物、地学を含み、これは、まさに近代博物学ではあるまいか。 ----------------------------------------------------------------------------------- 日本海洋学会教育問題研究部会案
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